ふるさとの手帖

日本市町村一周の旅をしたり。

大きな水元公園を目指して。【23区駅一周|2021年10月3日】

大きな水元公園を目指して。【23区駅一周|2021年10月3日】

旅メーター 
訪れた23区内の駅の数 【12/490】

12/490
2.45%

右上のうねうね。
金町→京成金町→北綾瀬

巨大な水元公園を目指して。

アンケートにひとこと、メッセージをいただいた。

「もし金町駅に寄ったら、水元公園に行って見てほしいです」

妙に気になった、短い一文。地図上で確認すると、金町駅からずいぶん北に離れたところに水元公園はあった。暮らしは駅の周りだけではない。むしろ、駅から離れた、観光客ばかりではない場所に、地元の人々の日常もあるはずだ。


金町駅。
京成金町駅。
北綾瀬駅。

金町駅で電車を降りた途端、若い女性がレッドブルを飲んでいて、ソワソワした。改札を出ると、日曜日ということもあってだろうか、とても賑わっている。行き交う人々はいたって普通だが、競馬新聞を熱心にチェックしているおじさんを見つけて、またソワソワした。

まずは水元公園へ向かう前に、金町駅と京成金町駅の周辺を歩いた。金町2丁目、3丁目は、驚くほど静かな日曜日だった。駅前の賑わいが嘘のよう。町並みは碁盤目状に美しく整い、計画的に整備されたことがよく分かる。おそらくは戦後以降だろう。昔の立派な日本家屋も時々あった。下町と表現する前に、場所によって町の特徴が全然違うのも、面白い。ただ、戸建ての住宅地が多い分、空が広く、それだけでも嬉しくなった。

静かな住宅街だ。

しばらく歩いた後、水元公園へ向かった。途中の東金町も落ち着いた住宅街だった。一画のちいさな公園で、体操服姿の女子中学生二人が、地べたに座って「〇〇、いま反抗期で〜す!」なんて言っている。どこに住んでいても、中学生は中学生らしいのが良い。

ようやく水元公園に着いたときには、結構疲れてしまった。しかし本番はこれからだ。近くに金魚の展示場があって、寄ってみることにした。25mプールほどの敷地に、小分けになった金魚の水槽がいくつも並んでいる。金魚の大きさ、色、それぞれ違うようだ。観察しながらほお〜、と思うのは簡単だが、どの金魚がどう違うのかとか、どれも似て見えるので、施設のおじさんに聞いてみた。おじさんはいろいろと教えてくれた。

水元公園内、水辺のさと。

おじさんにいろいろと教わった。
ピョンっ。

「全体じゃあ、1000匹はおるかなあ。でも、いま泳いどりますけれど、11月から2月はここも閉まるんです。冬眠するんですよ、金魚たちも」

金魚が1000匹いることに驚いたし、金魚が冬眠するってそもそも知らなかった。冬眠の期間中、お客さんのために土日は施設を開けているそうだけれど、「金魚は寝てるんですわ」と申し訳なさそうにおじさんは笑った。

また様々な種類の金魚は、互いに交配させながら誕生しているとのことだった。おじさんは話しながら、どんどん水を得た魚のように生き生きとしたので、「金魚、お好きなのですね!」と言ったら、「まあ、俺なんか退職して、2年は遊んどったんだからなあ」とまた笑った。おじさんの生きがいはいま、金魚なのかもしれない。金魚たちも、このおじさんと過ごす日々は幸せなんじゃないかな、お礼を言って施設をあとにした。

展示場を出てからは、ひたすら公園を西に進む。ぼくはここで、水元公園の広さを知った。もう、信じられないぐらい広かった。メインのエリアまで進むと、右から左まで一面に広がる水郷に、心を奪われる。見晴らしの良さは海外さながらであり、東京にいることをすっかり忘れさせた。さらに進めば一丁前の大きな森があり、ビルも見えない湿地帯があり、芝生の広場があり、歩いても、歩いても、またどこまでも公園が続いていく。

本当に広い。
メタセコイアの木々。水はけが悪いのも、なお良い。

湿地帯。
23区じゃないみたいだ。

野鳥を撮影する人たちが、集まっていた。夜鷹がいるんですよ、と教えてもらった。

家に帰って調べると、23区で一番大きな公園だと知って、心底納得した。東京ドーム20個分だなんて、そんな広いとは知らなかったから、いい意味で裏切られた。自然に関するものは、ひと通りこの公園に行けばあるのではないかと思った。ようやく公園を抜けられそうなところ、ぼくはもう、ほんとうに疲れてしまって、ひと気のないベンチの上に寝転んだ。ちょっと、休憩。まいったなあと、ひと眠り。

さて、がんばりましょうか。と、もう一度体を起こしたところ、奥の方でおじさんとおばさんが、一緒に何か作業をしている。すでに数えきれないほど、人とすれ違っていたけれど、二人に差し込む西日と、そのシルエットがあまりに美しく、この公園の美しさを象徴するようであった。思わず、お二人のところへ足が動いていく。

二人は一緒に、銀杏の処理をしていた。挨拶をして、お話を伺った。「茶碗蒸しが、楽しみだよ」とおじさんは嬉しそうに言った。黙々と夫婦で作業をしている姿は、何よりも美しかった。なんの変哲もない二人の日常が、なぜこんなにも輝いて見えるのだろう。理想を追い求めたり、他者と比較したり、承認欲求を満たされたいと思う心とは、まるで離れた日常に見えた。ご夫婦にあるのは、今日を味わう喜びだと思った。季節の巡りをおおいに喜び、今日という灯りを大切にすること。その灯りを手のひらに乗せて、消えないように包み込むこと。そのちいさな灯りこそ、日常という大切な幸せであると、知っている。お二人の写真を、撮らせていただいた。

ようやく公園を出て、北綾瀬駅まで歩いた。途中の中川で眺めた町並みは、ご褒美のような美しさだった。北綾瀬駅周辺でも写真を撮った。千代田線の車両基地方面へ歩き、そしてしょうぶ沼公園を歩く頃には、日が沈んだ。長い1日が終わった。

水元公園を出て、中川を目指す。

奥にはスカイツリー。

まもなく中川だ。
中川の飯塚橋。

水元公園の方角。
中川が美しい。
金町駅の方角。

中川を渡り、足立区に入った。北綾瀬駅を目指す。

北綾瀬駅が見えてきた。
駅近くの歩道橋。
この先に車両倉庫がある。

北綾瀬駅。すごく綺麗。

しょうぶ沼公園。
しょうぶがたくさんあった。
そして、日は沈む。

今日も「こんなに知らない日常が、広がっているのか」と思わずにはいられなかった。なんて幸せなことだろうと思った。

お金と権力があって、
美しいものがつくられるのは当たり前です。
それで生まれる文化もあります。

けれども、ふつうの暮らしの中から
生まれた美しさには、また違う輝きがあります。
(ほぼ日刊イトイ新聞 桐島かれんさん すばらしいものは消えていくけれども。|第3回| 2019年3月27日

本日は終わりです。読んでいただきありがとうございました。

COMMENTS & TRACKBACKS

  • Comments ( 2 )
  • Trackbacks ( 0 )
  1. 両親が住む街、金町へようこそ。
    初めて訪問した時、水元公園の広さにただただびっくりしました。駅から東金町を抜けてしばらく歩くと時間の流れが緩やかな街だなと感じたのですが、いかがでしたでしょうか。
    かつおさんの写真からもそんな穏やかな空気が感じられました。
    ですがほんの数年前、再開発前の駅周辺はもっと雰囲気が暗かったんですよ。ここへ移住すると聞いて驚いたものです。それだけに再開発って人の流れも空気も変えるんだなと実感しました。

  2. けんけんさま

    コメントいただき、ありがとうございます。はい、東金町もまた静かで、金町2丁目、3丁目との雰囲気の違いも、とても新鮮でした。なるほど、かつてはもっと雰囲気が違っていたのですね…。日常も、時代の巡り合わせなのかもしれません。

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