ふるさとの手帖

市町村一周の旅

年末のこと。【旧市町村一周の旅(長崎県|12月30日ー1月1日)】

年末のこと。【旧市町村一周の旅(長崎県|12月30日ー1月1日)】

年越しはどうなるかわからないまま旅を進めていたので、ネットカフェでひとり、年越しをすることになっても、それが旅だと十分に気持ちを整理していました。

「一人で年越しをしました」ということばは誰かに構ってもらうためではなく、誰かに笑ってもらうための話のタネにしようと。

ですが、ちょうど長崎県にお住まいのご家族に、「年末年始なら仕事が休みなので」と滞在のお誘いをいただいたのでした。
お父様は一度お会いしたことがあるけれど、お母様やお子さんにはまだ会ったことがない。
そして、もちろん年末年始なのだから、ほんとうに伺っても良いものか、念入りに尋ねた上で。

それでも是非と仰ってくださったことは、すごくありがたかったです。
年越しをひとりではなく、しかも旅先で、誰かと過ごすことができるのだから。


12月30日に上五島から佐世保に戻った後、お父様と合流しました。
まだ佐世保の街は巡っていなかったので、防空壕が店舗になっているトンネル横丁へ連れて行ってもらい、佐世保バーガーをご馳走になりました。
さらに針尾送信所という巨大な無線塔にも案内してもらって、初めて出会う風景が増えていきます。

午前中に上五島を出発。
佐世保へ。
トンネル横丁。

佐世保バーガーだ。
とても美味しかったです。ご馳走様でした。
道中にハウステンボス。
針尾送信所。超巨大な塔だった。

そして、日が暮れたあとにご自宅へ向かい、お母様や二人のお子さん、一匹のワンちゃんに挨拶をしました。
お子さんは高校一年生の男の子と中学二年生の女の子でした。
ぼくだったら、この時期にもし知らない人と年末を過ごすことになったら、いったいどんな気持ちになるだろうと思う。

やっぱり反抗期だったし、いつもの味気ないかもしれないけれど満ち足りているルーティンが崩れてしまうとしたら、どんな気持ちになるだろうと。
それもあって、年末年始に伺って大丈夫なものかと思っていたのです。

しかし、ぼくの視点だと一方通行だけれど、出迎えてくれたお子さんたちは驚くほど素直でトゲがなく、暗がりを感じさせない明るさがありました。

わあ、すごいなあ。
旅を通して、いろんなご家庭にお世話になっています。
家庭には必ず違いがあり、それは比較するものではなく、ぼくの心の中で足し算されていくものです。
またひとつ、新しい足し算に恵まれたのでした。

娘さんとお母さんが肉じゃがを作ってくださった。
とっても優しい味でした。
こんなのもあるよ、と。パピコみたいな豆乳。すごい。

翌日の大晦日はお子さんたちとWiiで遊んだり、紅白を観ながら年越しそばを食べたり、家庭の中に混ざって過ごさせてもらいました。
それがいかに唯一無二の体験であるかを感じながら。

そして、紅白歌合戦も後半に差し掛かるところでお出かけという流れでした。
長崎市街地へ連れて行ってもらいます。

長崎の夜景は地上から見ても展望台から見ても、美しかった。
山の斜面に光る家並みは立体的で、どこまでも続きそうな広がりがあって。

年越しそばをいただいた。
長崎市街地へ。

長崎の夜景。見事だった。

23時を過ぎてからは、興福寺というお寺に連れて行ってもらいました。
すでに行列ができていて、それは除夜の鐘を待つ行列でした。
地元で年越しをしていたときも除夜の鐘はきこえていたけれど、自分たちも鳴らせるという発想は個人的にありませんでした。

ちょうど住職さんが私たちに話しかけます。

「ここ数年、鐘を撞いてもらうことはできませんでしたが、今年から再開しました。団体さんはみなさんで、一回の鐘撞きをお願いします。それと……、一回目の鐘は私が鳴らします」

最後のことばで場が和んだあと、除夜の鐘が鳴り出しました。
ぼくたちが何回目の鐘だったのかはわかりません。
三十番目ぐらいかな、といったところですが、いよいよ順番が回ってくると、一本の撞木をご家族みなさんといっしょに抱えて撞きました。
「強く撞きすぎないように」と言われていたけれど、ちょうどいい、すごく心地よい響きで。
これもぼくにとって、新しい体験でした。

興福寺さんへ。

鐘を撞く列。
鐘を撞いたあと、生姜湯をいただく。

そして、諏訪神社へ初詣に向かう途中、めがね橋を案内してもらったところで、年越しを迎えました。
夜ですし、石橋がいくつかあるので、正確には年越しの瞬間はどの橋の上にいたのかわからなかったけれど、あとから地図を見ると、めがね橋の上にいたのでした。

近くの飲食店の前には小さな人だかりができていて、その人たちがカウントダウンをしてくれたおかげで、年越しの瞬間もわかりました。この先、めがね橋の上で年を越すことはないかもしれません。

めがね橋のそばで。


諏訪神社は市内でも有数の神社です。
すでに初詣を待つ人たちで長い行列ができていました。
ぼくたちも並びましたが、なかなか前に進まず。
どうやら参道の上では奉納の“龍踊”が披露されていたようです。
辰年に合わせて、12年に一度行われるのだと。
それは見られなかったけれど、地元の人たちに混ざって待つ行列も退屈じゃなかった。

諏訪神社へ。

合図があると、進んでいく。

参拝のあと、おみくじを引いた。吉でした。

参拝まで一時間半かかり、それからご自宅まで運転していただくと、すっかり夜の遅い時間に。
明日は初日の出を見られるだろうか。
正直、自信がないとお伝えして寝ました。

ですが、ぎりぎり6時ぐらいに目が覚めて、有明海のそばまで連れて行ってもらうことに。
鳥の大群が何度も有明海の上空を飛んでいき、それは龍のようでもあり。

地元の方々も続々と集まってきて、無事に初日の出を見ることができました。
雲仙普賢岳の裾野から、雲の合間をくぐって。

夜明けが近い。

まもなく。
見えた。眩しかった。


そして、ご自宅に戻って仮眠をさせてもらい、午後からはサッカー日本代表のタイ戦をみなさんと観て、勝利した森保監督のインタビューが流れていたところで、テレビの画面が切り替わりました。

情報が渦巻き、いろいろとよぎって自分の小ささを実感していく。
この行間を埋めようとも思いましたが、自分にとってはまだ行間のままです。

遠巻きであることの無力さ。
それに対して、自分が満たされたいことと、ほんとうにできることはわずかながら違っている。
でも、自分がそのことを言える立場には、ほんとうはまだない。
それは、自分の心がまだまだ弱いから。
そのことを忘れてもいけない。


被災された方々が、少しでも日常へ戻ることができますように。
心より平穏をお祈り申し上げます。

COMMENTS & TRACKBACKS

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  1. さかなのこ

    かつおさん、こんにちは。
    いつも楽しく記事を拝見しております。

    長崎在住の者ですが、年越しを当地で迎えられたとのこと、大変光栄に思います。

    九州は美味しいものが多く、特にカキやヒラメなどの海産物が旬を迎えていますので、機会があれば食べてみてください。

    引き続き、長崎・九州を回られているかと思いますが、本年の旅も実り多いものになることを願っております!

    道中、お気を付けて佳き旅を!

  2. さかなのこさま

    こんにちは!記事を読んでいただきありがとうございます。とてもうれしいです。
    そして、カキやヒラメも是非食べてみたいです!
    さかなのこさまも、どうか良きお時間をお過ごしくださいませ^^
    ありがとうございます!

    仁科拝

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