今日までの旅メーター
訪れた政令指定都市の区の数 【59/175】
訪れた旧市町村の数【556/2,093】 総計【615/2,268】スーパーカブの総走行距離
16580km
阿賀野市の冒険と鉄道のまちへ。(2023年10月16日(月)―193日目)
今日は、昨日から降り続いていた雨が止むのを待って、朝9時過ぎに出発しました。天気予報は降ったり止んだり。小さな雨雲が、偏西風に乗ってやってくるわけです。秋田県や山形県の日本海側を巡っているときに、こうした雲が多いと感じました。だから、雲さえ当たらなければ晴れるし、雲が当たってしまえば土砂降り。結論を言うと、午後に一度土砂降りになったのですが、温泉に浸かっていて雨に濡れずに済みました。それ以外の時間は、結構良いお天気で。もちろん、近くで土砂降りだろうと肉眼で見える場所もありました。ちょっぴり運を使ってもったいないような。いえいえ、とてもありがたいことですね。それでは振り返っていきましょう。
旧笹神村(阿賀野市)
今日は元々、阿賀野市ではなく阿賀町方面へ行こうと計画していました。ただ、出発時間も遅いし、雲の様子を見て山側は控えたほうが良い気がして、阿賀町よりも日本海側の阿賀野市を巡ることに変更したわけです。出発してからルートを変えたんですね。それで最初にやって来たのが、阿賀野市の旧笹神村です。
新発田市から国道460号線を進み、折居川を渡ったところで右折して、川沿いに進んでいきます。道路の斜め左手は山脈が連なっているわけですが、どんより分厚い雲に覆われている。一方で日本海側の後ろへ振り向けば、青空が広がっている。山が天候を左右していることが見てとれます。やがて笹神支所を越えたところで、湧水地である岩瀬の清水を訪れました。駐車場が小学校のそばにあって、カブを停めても良いものか一瞬迷いましたが、新潟県ナンバーの車も数台停まっているので、大丈夫でしょう。「入口」と書かれた看板も学校方面を指しているので恐る恐る進みますが、グラウンドのそばに確かに湧水地が整備されていました。
湧水地では、地元の方たちが大量に水を汲んでいます。おじいちゃんも手伝いましょうかと言いたくなるほど大きなペットボトルを何本も運んでいて。小慣れた人は台車を使っていました。そして、あとから来たおじさんはペットボトルを野菜のかき揚げみたいに何本もまとめていて、紐を使っているみたいでどうやっているのだと、聞きたくて仕方がなかったです。当たり障りなく「毎日来ていらっしゃるのですか?」と尋ねたら「週に一回ぐらいですかね」と。月曜日のルーティーンかもしれません。
旧水原町(阿賀野市)
今度は旦飯野神社から西に進んで、旧水原町に入りました。最初にやって来たのは「瓢湖」です。白鳥の飛来地として有名ですが、前回の旅では瓢湖を訪れておらず、「あなたは瓢湖すら行っていないんですか?」と知らない人にSNSで言われたことがあります。3年経っても覚えてしまっているので、SNSの使い方には注意ですよね。
その瓢湖を訪れてみると、人だかりができています。観光バスは見当たらなかったけれど、団体客かな…と思いながら近づいていくと、どうも様子が違う。湖まであと10mぐらいのところで、気づきました。湖のほとりでおじさんが餌やりをしていて、数え切れないほどの鴨が集まっているのです。湖面は鴨、鴨、鴨。訪れた人たちもその様子に釘付け。おじさんは公式の餌やり担当のようで、おじさんが移動する方角にバサバサバサァ! と鴨たちが突風を巻き起こしそうな勢いで移動します。熾烈な世界でした。ふだん鳩の餌やりで、ちょっと嬉しい気持ちになっている全国のおじいちゃんおばあちゃんが、この光景を見たらカルチャーショックに違いありません。数羽、白鳥もいましたが、鴨たちの勢いが激しいのとは逆に、白鳥はずいぶん大人に見えました。餌やりが終わってからも絶えず、くわくわと鴨たちの声が響いている。世界は広いなあ。帰り際に見つけた看板では、1日3回の餌やりが行われているとのことでした。そのうちの1回に偶然重なったわけですね。ちなみに白鳥はすでに、630羽飛来しているそうです。すごい規模だなあ。
旧安田町(阿賀野市)
次にやって来たのは、旧安田町。吉田東伍記念博物館に行きたかったのですが、今日は休館日なので外観だけ眺めました。吉田東伍(よしだとうご)は日本全土の「郷土」を集大成した全国地誌『大日本地名辞書』を13年かけて編纂した人物です。学歴があったわけではないものの、功績を認められて学位を授与されたことから、「在野の大学者」と称されたと。
吉田東伍の生まれは1864年で、民俗学者の柳田國男は1875年、宮本常一は1907年生まれなので、彼ら民俗学者よりも前に生きた人物。全国の地名をまとめることに心血を注いだ人物がいると知って、なんだかぼくにとっては希望のように感じました。阿賀野市のHPで吉田東伍の紹介に、
-歴史的地名を失うことは郷土を失うことである-
と書かれてありました。旧市町村を巡っていることも、同じ気持ちであります。声高らかに言っても、くすくすと笑われてしまいそうですが。
そのあと、安田交流センター前で見つけた食堂の幸来軒さんでひと休憩。麻婆豆腐定食を注文したところ、麻婆豆腐が美味しくて美味しくて。とろみの中にコクがあって、住んでいるまちにこの味があったら通っちゃうぜ、と汗だくになりながらの完食です。
旧京ヶ瀬村(阿賀野市)
次は北に進んで、旧京ヶ瀬村を目指します。旧安田町の市街地を抜けると、平野部が広がっていますが、道は緩やかなカーブが多い。小さな集落に入ると、スピードをかなり落として走るのが安全でした。
珍しい名前の梅護寺(ばいごうじ)を訪れました。国の天然記念物に指定されている桜の木があって、その名も「梅護寺数珠掛桜(ばいごうじじゅずかけざくら)」。親鸞上人が手に持っていた数珠を、桜の枝に掛けて仏法を説いたところ、毎年数珠のように花がつながり咲くようになったと言い伝えられています。越後七不思議のひとつだそうです。桜の季節ではないですが、桜の木は穏やかに風に揺れていました。秋を待ち、冬を忍び、春にはどのような花を咲かせるのでしょう。
旧新津市(新潟市秋葉区)
朝、旅のルートを変更したのは雨の様子から判断した点もありますが、もうひとつ、新津の鉄道資料館に行きたいという理由もありました。明日が休館日なんですよね。新津は鉄道のまちです。と、調べているときに感じていたし、新津出身の知り合いの方から、鉄道資料館には行くべしと教えていただいたので、やはり外せないと。
受付で係員のおじさんに館内の説明を丁寧にしてもらいました。「最初は5分間の映像を見てもらうと、新津の鉄道のことがよくわかります」同時に説明を聞いていたご夫婦はその映像を見ずに展示に行ってしまったけれど、ぼくは資料館などでつくられている映像を見る習慣がついたので、5分は短く感じます。長いときは、18分とかありましたし。
新津が鉄道のまちとして発展したのは、近くで石油が採掘されたことや、いくつもの路線のハブ駅になっていったことが挙げられます。今も信越本線、羽越本線、磐越西線の3つの路線が新津駅を経由していて、なるほどなあと。
そして、資料館のあとに新津温泉へ向かいました。なんでも石油の匂いがするのだとか。昔の旅館のような外観で、温泉か戸惑いましたが、近づくと番台さんがいらっしゃいます。いよいよ温泉の扉を開けると、今までかいだことのない匂いがしました。そういえば石油の匂いって、はっきりかいだことないなと。油系の匂いだけれど、よくわからない。強いて挙げるなら、火気厳禁っぽい匂いでした(もちろんボイラーで熱せられているので、そこは大丈夫です)。お湯はわずかに青を含んでいて透明。ぬるかったのですが、そういうものなのだろうと一人で浸かっていたところ、地元のおじいちゃんがやってきて、「ぬるいなあ」と。そして、「ここに、ボイラーのボタンがある」と言って、入口のそばにあったボタンを押して、ボイラーを作動させていました。そんなん知らんわあ。マニアックな仕組みを感じながらも、肌は確かにすべすべです。そうそう、新津温泉に浸かっていたとき、雨がかなり降り始めて、出るころにはちょうど止んでくれました。
もうひとつ、新津出身の方から、ショッピングモールの「ベルシティ新津」が10月末で取り壊しになること、その2階にあるカフェ「アメリカンカフェ ウインズ」に小さな頃からよく遊びに行っていたことを伺って、行ってみることにしました。
ローカルな雰囲気溢れる店内で、店主が好きなのであろうサラリーマン川柳が、いくつも壁に貼られています。デザートよりも食べ物がお店の味かなと、さっき昼食を食べたばかりだけれど、ナポリタンを注文。炒めたケチャップが細い麺に濃厚に絡まって、舌の上でガッチリと友情の握手を交わします。いい味のナポリタンに出会えたなあと、嬉しい気持ちでいっぱい。店主の方に取り壊しの話を伺ってみると、お店を開いて39年だと教えてくれました。わあ、39年間の歴史が、ここには詰まっているんだ。「隣はゲームセンターもあるから、土日はよく子どもたちが来てくれて。アイスクリームを頼んでくれたりとかねえ」ほんとうに39年間、お疲れさまでした。
というわけで、今日の散策はここまで。阿賀野市も新津も、いろんな場所がありました。たくさんの出会いに感謝です。
新津温泉の油のような、油でないような不思議な匂いが、ちょっぴり肌に残っています。
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今回の旅をはじめる前に、自費出版の写真集「どこで暮らしても」を製作しました。東京23区を1200kmほど歩いて巡り、撮影した一冊です。売り上げは旅の活動費として、活用させていただきます。
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