今日までの旅メーター
訪れた政令指定都市の区の数 【59/175】
訪れた旧市町村の数【494/2,093】 総計【553/2,268】スーパーカブの総走行距離
15290km
目次
縄文、音楽、マタギ、クマ、湖、武家屋敷…秋田の世界。(2023年9月20日(水)―167日目))
たっぷりの水分で包まれた空。ここ数日の荒れた天気を見ている限り、今日も雨に降られるかどうかは、まったく読めない。山並みには低い雲がかかり、時折日差しが差し込んで、淡い影が現れては消えている。
それが朝の様子であったが、途中から唸るような雨も降った。それでは秋田の山間部を進んで行こう。
旧合川町(北秋田市)
大館市を出発して、北秋田市へ向かっていく。北秋田市からいちばん近いのは旧鷹巣町だけれど、訪れたい史跡がまだ開館前なので、旧合川町まで。
木によっては20m以上あるだろうか。背の高い木々に囲まれた細い県道24号線を抜けると、合川のまちが広がる。
中心部の合川駅近くを歩き、北欧の杜公園へ向かう。北欧の杜には水鳥の池があって、木造の野鳥観察舎が建っている。そこに置かれてあった望遠鏡で覗くと、鴨やサギがのんびりとした時間を過ごしていた。
旧鷹巣町(北秋田市)
旧鷹巣町で訪れたかったのは、世界文化遺産の「伊勢堂岱遺跡」だ。北海道・北東北の縄文遺跡群として登録されている。縄文後期、4000年ほど前の遺跡が残されていて、特徴は「環状列石」が残っていること。いわば、ストーンサークル。祭祀がおこなわれた場所だと考えられていて、実際に4つの環状列石を見ることができた。
見た目は素直に、土俵を数倍大きくしたぐらいの直径で、石が円形状に並べられている感じ。でも、この石を積んだ人たちが、4000年前にここにいたわけで、4000年後に、今ぼくが同じ場所に立っているわけなのだ。
ちなみに、この遺跡が見つかったのは、大館能代空港への道路建設に先立つ発掘調査のとき。地域住民や県民から保存の声が高まって、当時の知事が道路計画を中止し、遺跡を現地保存することにしたと。素晴らしいことだなあ。
旧森吉町(北秋田市)
旧森吉町に向かっている途中、雨が降り始めた。ギリギリ、合羽無しでも耐えられるぐらい。「浜辺の歌音楽館」に到着。ここでは作曲家・成田為三の音楽活動の歴史が紹介されている。成田為三は「浜辺の歌」や「かなりや」を作曲した人物だ。それに、先日千秋花火の演奏で好きになった「秋田県民歌」も作曲している。
2階に案内してもらうと中央にピアノが置かれていて、人間が座っている。ビックリしたが、人間そっくりの成田為三の人形だった。9分ほどの映像を見て、変奏曲も聴いてみる。ピアノの自動演奏で、ピアノから流れる音は心地良いなあと癒しをもらう。
音楽館にいるとき、ものすごい音が外から聞こえて、窓の外を覗くと唸るような大雨だった。流石にこの雨は、合羽を着ても厳しい。と、受付の方にも相談して、館内でしばらく雨宿りさせてもらった。30分ぐらいして、ようやく止んだのでホッとする。
旧阿仁町(北秋田市)
雨が止んで向かった先は、旧阿仁町。阿仁地方はマタギ発祥の地と言われている。
「マタギ」とは古来より山深く分け入って熊などの狩猟を生業にしていた人のことを言います。特に秋田県阿仁地方は「マタギ」発祥の地といわれており、「マタギの里」として全国的にも有名です。
(秋田犬ツーリズムより引用)
南北に通る県道105号線を通ると、阿仁前田温泉、阿仁合、比立内など、小さな集落が点在していて、独特の雰囲気を醸していた。ぼくのような旅の服装の人間は、ちょっと緊張するような。
そして、「くまくま園」に行った。母親を失ったりして保護することになり、野生ではなくなってしまったクマは、森では暮らせなくなる。そうしたクマの受け入れがきっかけでつくられたのがこの施設だ。
ツキノワグマとヒグマがいた。クマはとても賢い。ぼくみたいな素人が思っている数倍は賢い。だから、自分が森に入るときは、やっぱり会わないようにしなきゃ。ヒグマと目が合って、同じことを思った。
旧西木村(仙北市)
仙北市の旧西木村では、上桧木内(かみひのきない)の紙風船上げが知られている。冬に行われる行事で、灯火をつけた大きな紙風船が、冬の夜空に舞う。その光景を直接見たことはないけれど、「あの風景だ」と思ったのは、「True North, Akita #2」の映像だ。
ぼくはこの動画が、ほんとうに大好きなので。この動画の地域も紙風船上げも、上桧木内の映像だと。ここには本質が映っている。いつかこういう仕事を、できるようになりたい。
旧田沢湖町(仙北市)
田沢湖に行ったことがなかったのも、ずっと心残りだった。以前、仙北市を旅したときは、角館を巡ったのだ。だから、初めて湖の姿が見えたとき、とてもうれしかった。曇り空からやわらかい光が差し込んで、湖面は穏やかな波が小さく繰り返されている。ああ、いいなあ。この込み上げてくる気持ちに具体的な理由はない。そういうものが、本物なのだと思う。
旧田沢湖町の市街地も訪れた。豊かな山並みと田園風景に、湖の気配をいったん忘れてしまう。住宅街の線路を大きな新幹線がゆっくり通過して行ったことも新鮮だった。
旧角館町(仙北市)
最後に訪れたのは角館だ。人生で2回目の訪問。到着するのが遅くなってしまって、武家屋敷は閉まっていたけれど、日が沈みきってしまう前にまちを歩いた。
市町村をぜんぶ回ってからの再訪、「やっぱり角館はすごいな」という感情が湧いてくる。道幅がどっぷり広く、左右に木々が生い茂り、重厚な武家屋敷が鎮座している。千葉の佐倉、山口の萩、鹿児島の出水や知覧……いろいろ武家屋敷はあるけれど、角館の武家屋敷の雰囲気は、オンリーワンだ。
秋田県で一度はと思って、角館のホテルに宿泊した。市街地でバイクも停められたので、久しぶりにお酒を飲んでも大丈夫か……。それに明日は一日中雨予報なので、旅を休める計画だ。
今までの旅路で、一人で居酒屋には入っていない。現地で連れて行ってもらったことはあっても、それはご馳走になってしまう形だし、自分でお店を選んでいない。お酒も強くないし、常連さんばかりだと気まずいし、お金もかかるし、一人で居酒屋に入ることにちょっとした恐怖感がある。
でも、旅を始める前に、「美味しいもの食べてきてね!」と言ってくれた人が、何人かいたことを思い出す。やっぱり自力でそういう体験をしなきゃなあ。
と、思い切って見つけた居酒屋に、入ってみた。
「一人なんですが……」
「カウンターでもいいですか?」
「はい……!(ヒィ……!)」
案内されると、左手にマダムが二人、右手に若い女性が一人の先客。真ん中に座る。なるほど、こういう状況ですか。下手なことをしないように、しっぽり静かに過ごそう。きっと美味しいものも食べられる。
……何食わぬ表情を演じているとき、左手のマダム二人が「どこから来たの?」と話しかけてくださる。あっ、気さくな人たち。観光客ですか?と逆に尋ねると、二人のうちの一人が、いえいえ地元よ。さらには「私、ここの女将なの」と。
「(そういうパターンかァ!)」
「これ、私が漬けた茄子ね」
「これ、スパークリングワイン、飲みましょう」
と、あれよあれよと、いろいろご馳走になった。
そして、右手にいた若い女性は、香港から日本に働きに来ている方だった。男鹿市で働いていて、1日電車に揺られ、角館までやって来たと。はあ〜、すごい! 一緒にいろいろご馳走になった。
「楽しい夜だったわ〜!」
と女将たちは代行を呼んで颯爽とお帰りになられたけれど、楽しかったのはこっちのセリフだ。角館、また来たいなあって。今度はもっとゆっくり過ごしたい。香港の方も、きっと楽しかったんじゃないかなあ。
というわけで、今日の散策はここまで。今、秋田にいることを、大切に。
マタギについてもそうですし、出来るだけ早く、ゴールデンカムイを読みたいです。
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今回の旅をはじめる前に、自費出版の写真集「どこで暮らしても」を製作しました。東京23区を1200kmほど歩いて巡り、撮影した一冊です。売り上げは旅の活動費として、活用させていただきます。
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