ふるさとの手帖

市町村一周の旅

帰還困難区域が残る、福島県浜通りへ。【市町村一周の旅】

船酔いしてしまいそうな東京都の目まぐるしい離島旅が終わり、残すはあと「福島県」、「鹿児島県」、「沖縄県」との3県となりました。44の都道府県は全ての市町村に行ったんだなぁと思うと、旅の気味悪さがますます露呈してしまいます。使命感に駆られているわけではありませんが、ここまで来たらあと少し。前へ進んで行きましょう。

残す3県の中で今回お伺いするのは福島県。東京都からそのまま北へ、北へ。

残っていた浜通りの地域。

 

2011年3月11日の東日本大震災、そして東京電力福島原子力発電所の爆発により放出された放射性物質。まちは大きく変わりました。今も続く除染作業、私たちの日々の暮らしは果たしてあたりまえなのでしょうか。

避難指示区域は徐々に変動していますが、まだ町全体が帰還困難区域となっている地域もあります。そして帰還困難区域は宿泊はもちろん「歩行者」「二輪車」などは通行が禁止されています。浜通りで通過できる主幹道路は国道6号線の1本のみ。原則、自動車でひたすら通過するしかできないわけです。

避難指示区域について|ふくしま復興ステーションより引用。

 

原付で通過できないということで1年以上行けないまま残っていた福島県。レンタカーで行くにしても「停車」できないので写真は撮れませんし、誰かの車に乗せてもらって6号線を通過、撮影するという方法しかありません。どうすればいいかな、と悩みの種でしたが、今回「Next Commons Lab南相馬」というプロジェクトチームの鵜澤さんに協力していただき、6号線を通過することができました。


↑↑NCLさんについて。

日本の様々な地域で課題解決を目指すNCLさんの活動。繋がりのきっかけは岩手県遠野市でNCLのメンバーとして「株式会社遠野醸造」を設立されるなどして活動されていらっしゃる田村さん。今年6月に行った僕のクラウドファンディングに支援していただき、7月には直接遠野へお伺いさせていただきました。そのつながりで田村さんからNCL南相馬の鵜澤さんを紹介していただき今回お伺いすることができたというわけです。

東京からいわき市へ。

 

東京からいわき市へバスに乗って移動。月曜朝の東京は鬼の満員電車でした。


 

そしていわき市から鵜澤さんに拾っていただき、そのまま南相馬市まで北上して行きます。原則降りることはせず、助手席から撮影させていただきました。

①広野町

いわき市から最初に入ったのは広野町。広野町と次の楢葉町では現在「帰還困難区域」は存在せず、歩行も可能ですし多くの方が生活を送っています。

広野町へ。

案内板。19km先からは二輪と歩行者は通行不可。

イオンが目の前にある広野町役場。

 

②楢葉町

次は楢葉(ならは)町。原子力発電所から半径20km内に位置するため、平成27年まで避難区域となっていました。元々7000人ほどいた人口、今は約4割の3000人が楢葉町に居住しています。

逆に言えば、6割の人は町へ戻って来ていないということです。

楢葉町へ。

町内では木戸川にやってくる鮭の遡上が有名です。

Jヴィレッジ。

 

サッカーのナショナルトレーニングセンターとして建設されたものですが、東日本大震災後は原発事故収束のための中継基地として機能しています。鵜澤さんの親戚の方も東電の下請けで収束作業に当たっている人がいて、ここから大勢がバスに乗って発電所まで向かったりしていたそうです。

道の駅。

③富岡町

次は富岡町。町の大半がかつては避難区域となり、平成29年に一部を残して規制が解除されました。町の北側、大熊町に近い町の部分は今もなお帰還困難区域として生活することはできません。案内していただいていた鵜澤さんのご出身は富岡町。そしてご実家は帰還困難区域内。実家にはもう基本的に戻ることができないそうです。

富岡町。
この辺りから、復興工事の色がより強くなって来ます。

常磐線が南から通っているのは現在富岡駅まで。富岡ー浪江間は今もなお不通区間となっています。
レトロな建物も。

町の中心部に建つレトロな建物。もともとは福島第二原発のPR目的で作られたエネルギー館。

今は廃炉資料館に。

2018年11月に改装オープンした廃炉資料館。「反省と教訓」「廃炉現場の姿」などを映像とパネル展示で説明しています。

館内ではシアタールームにて12分の映像にまとめられた震災直後、現在の発電所の様子などを見ました。映像の前には進行役の方が事故について深々と頭を下げ謝罪。映像もかつての様子が鮮明に思い出されるようなものでした。ただスクリーンは広いし地面にも映像が流れるし、今までのどんな美術館や資料館より最新型でしたね。

「事故の事実を確認していただける場」

がコンセプトの廃炉資料館。館内ではあちこちに謝罪の弁が溢れ、東電の社員さんはみんな平身低頭で来場者を迎えます。

「私達は、あの巨大津波は事前に予想が困難だったからと言う理由で、今回の事故を天災と片付けてはならないと考えています。私達は人智の限りをつくした事前の備えによって防ぐべき事故を防ぐことが出来ませんでした」

事故によって多くの人の生活が奪われました。天災、人災、原発の必要性、これからの国はどうなって行くのでしょうか。原発に関してもきっといろんな声があるでしょう。あちこち日本を巡りましたが「日本ってこんなに原子力発電所が多いんだな…」と感じたことだけは事実です。

富岡町。ここから先は帰還困難区域。


困難区域では何時になっても多くの警備員が必ず常駐しているそうです。
6号線以外は通行証が必要。
人が管理しなければ、朽ちていく。

④大熊町

大熊町は主要部が帰還困難区域に指定されています。

大熊町。
バスやトラックが多い。

 

トラックが多いのは工事が続いているため。バスが多いのは先ほどの廃炉資料館に研修などで訪問する人が非常に多いため。事実、廃炉資料館は平日でしたが大型バスが何台も止まり、人で溢れかえっていました。

俗にいう「バリケード通り」

 

もちろんこの一帯は誰も住んでいません。取り壊す建物も多く、順番待ちがほとんどだそう。バリケードによって閉ざされた建物たちは泣いています。


中間貯蔵施設。

 

中間貯蔵施設は放射性廃棄物や使用済み核燃料などを最終処分場または核燃料再処理工場へ運ぶ前に一時的に保管する施設。

奥のクレーンが並ぶ場所が福島第一原子力発電所。

 

⑤双葉町

福島第一原子力発電所は大熊町と双葉町の間に位置しています。双葉町は町全てが「帰還困難区域」です。

双葉町。

取り壊される家々。
ファミリーマートも。

 

鵜澤さんの母校は双葉町。これから数年いや数十年、母校はもちろん通学路を歩くことも、できないまま。

⑥浪江町

浪江町。浜通りの海近くは避難区域が解除されましたが、放射性物質が風で流されてくる町の西側の大半は、避難区域のまま。

浪江町へ。

やっと、この辺りから人が歩いてもいい。
町役場。

 

⑦南相馬市

鵜澤さんが働かれている拠点は南相馬市にあります。そして僕の福島県の旅も、南相馬市が最後の市町村。

南相馬市へ。
海が見えるこの辺りは津波が届いたそう。


鵜澤さんが働く南相馬の「小高」という場所まで連れて来ていただきました。町を散策します。

小高パイオニアヴィレッジ。

 

鵜澤さんをはじめとするNCL南相馬の皆さんが拠点とするコアワーキングスペース、「小高パイオニアヴィレッジ」。原発事故により2016年7月まで避難指示区域となっていた南相馬市小高区ですが、地元に根を張って暮らす住民と他拠点をフィールドに活動するソトモノが混じり合い、躍動する空間として昨年完成しました。

境界の曖昧な建築、が特徴。

宿泊スペースもあり、今日はこちらで休ませていただくことに。コアワーキングスペースと宿泊スペースがあるってすごい良いですよね。

福島県浜通りの6号線、いつかちゃんと通ってみたいと思っていましたが、その念願が叶いました。福島の方々は大きな災害で様々な物が奪われた中、我慢強く、そして上を向いて明るく、前へ進んでいるように感じられました。小さなことでネチネチ言うのがいかにつまらないかということを反省するのでした。

鵜澤さん、貴重なお時間を割いていただき本当にありがとうございました。

COMMENTS & TRACKBACKS

  • Comments ( 7 )
  • Trackbacks ( 0 )
  1. 南相馬出身のものです。
    とりあげてくださりありがとうございます。
    あの日から時間とともに風化され、このまま忘れられていくのかと思っていました。
    素敵な旅と写真、そして文書をありがとうございました。

    あなたの言葉に勇気づけられました。

  2. ❌ 帰宅困難区域
    ⭕️ 帰還困難区域

  3. コメントありがとうございます。直接お伺いする中でも現地の方とお話しをさせていただき、本当にありがたかったです。私自身、できることをもっとしなければと痛感させられました。こちらこそ本当にありがとうございました。

  4. 修正させていただきました。このたびの誤植、深くお詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでした。

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