1月13日。しんと冷えた朝、車のヘッドライトが奈留島港へ走っていく。島に到着したフェリーは20人前後の客を乗せ、定刻通り福江島へ出航した。島影からは、美しい朝日が昇る頃だった。
そして、福江島へ着いた後、9時20分発のジェットフォイルに乗り換えて長崎港を目指す。乗船客はかなり多く、席の2/3は満席だった。高校生が部活の遠征でも利用していた。ぼくの席の両側にも人がいて、片方の席は、シスターだった。
長崎港へ着いてからは、県央へ移動する。年末年始にお世話になったご家族のおうちへ再び伺い、県央から島原半島へ進むまで、ありがたいことに2泊3日、滞在させてもらったのだった。
今日までの旅メーター
訪れた政令指定都市の区の数 【81/175】
訪れた旧市町村の数【788/2,094】総計【869/2,269】スーパーカブの総走行距離
22090km
1月14日。諫早市内を巡っていく。最初に旧飯盛町へ向かおうとしていたときだった。偶然、諫早高校の正面を通り過ぎた。ちょうどそのとき、学ランと鉢巻姿の高校生が集まっていたところだった。
すぐに、大学入学共通テストの応援団だと思った。今日が2日目だと知っていたからだ。きっとこの後、3年生にエールを送るんじゃないかな。その姿があまりにかっこよくて、いつぶりか思い出せないぐらい、久しぶりに声をかけた。
顧問の先生がいらっしゃったので、名刺を渡し、旅の事情を説明し、もしよかったら写真を……と尋ねたところ、生徒さんたちは慣れた様子で、良いですよ! とかっこよくポーズを取ってくれた。素敵な生徒さんたちだ、と思った。声をかけることが久しぶりだったので、緊張したけれど、すごくうれしかった。
じゃがいも畑の地形に驚きながら。ー旧飯盛町(諫早市)
諫早高校を通り過ぎたあと、県道41号線を南下し、旧飯盛町を目指した。小さな峠を越えていく。道中には大きな鳥居もあった。飯盛支所付近は、山並みが中心の景色だった。
そして、市街地からさほど離れていない、橘湾近くの白塚公園という場所を目指した。どんな海の景色なのだろうと気になったのだ。
すると、だ。直前の漁港の町並みが抜群に良い。さらに、町並みに広がる丘陵地が、そのまま海の直前まで通じており、地形が独特なことに気づいた。そこに石積みの段々畑ができている。これは…じゃがいも畑だ!
散歩していたおじさん、おばさんとそれぞれ挨拶をして、会話も弾んだ。ここにいたら、自然と人と会話したくなるような風景だった。おばさんに景色の凄さを伝えたら、笑顔で教えてくれた。
「1日2回、ここに景色を見にくるの。堤防に座って、ああ良いなあ、って」
ほんとうにこの景色は、毎日見ていられると思った。すごい景色があるなあ。
次にやってきたのは、旧森山町。国道251号線から、雲仙市の旧愛野町まで入り、Uターンして旧森山町へ向かう。このとき国道から見える海と集落、赤土のじゃがいも畑がほんとうに圧巻だった。
そして、森山ふれあい公園に着くと、子どもたちが練習でグラウンドを駆け回っている。最初はサッカーかなと思ったけれど、ラグビーチームだった。4チームあったけれど、それぞれラグビーをしているようだったので、とても良いなあと思った。
次にやってきたのは、旧高来町。小高い丘に住宅が並び、国道沿いは内陸の風景が広がっている。でも、南側は干拓地とあったから、昔はもっと海が近かったのかもしれない。
湯江駅へ訪れてみると、近くに恵比寿さんがいただけではなく、駅の入り口に墨で書かれた「がんばれ‼︎對馬洋」の太い文字が目に入った。その横には小さく、「高来地域の観光と歴史をPRする会」とある。
對馬洋(つしまなだ)関は、諫早市旧高来町出身の力士で、現在も1月場所に取り組んでいる。地元に力士さんがいるって、すごいことだなあ。
フルーツバス停は、やっぱり良い。ー旧小長井町(諫早市)
旧小長井町には、フルーツバス停がある。同じ国道沿いの旧高来町でもバス停を気にしていたけれど、旧高来町のバス停は普通で、旧小長井町に入ってから、フルーツバス停に見事に変わった。
バス停だけではなくまちなみも意識してみると、海沿いの斜面に住宅が並び、海のすぐそばにはグラウンドもあって、暮らしと海が近いなあと感じられた。小長井中央漁港からは、有明海へ漁船が出港する様子にも出会って、とても好きな雰囲気だった。
多良見のぞみ公園から、大村湾を見渡す。ー旧多良見町(諫早市)
旧小長井町から諫早市街地を通過し、旧多良見町まで移動していく。まずは阿蘇神社を訪れた。古い納め物がたくさん集まっていて、節分のときに焚かれるようだ。
ちなみに阿蘇神社や多良見支所は、諫早市街地とそこまで距離が離れていない。だから、雰囲気がどこまで変わるのだろう。諫早市街地と似ているのかな、違うのかな、と思っていたけれど、雰囲気は違うと感じられた。大村湾により近いまちの気配だなあと。
そして、大村湾沿いの道を進み、多良見のぞみ公園を目指す。道中のまちなみが美しい。公園に着くと、綺麗に刈られた芝の斜面を使って、子どもたちがソリで遊んでいた。奥のバスケットコートでも、家族連れが楽しそうに遊んでいる。素敵な日常の空間が流れていた。
最後に諫早市街地へやって来た。眼鏡橋を中心に散策する。この眼鏡橋は、もともと市街地を貫く本明川に、天保10年に架けられたもの。本明川は荒れ川で洪水に見舞われることが多く、近年では昭和32年の大水害によって、甚大な被害が出た。
ただ、そのときも眼鏡橋はびくともせず、むしろ流木を堰き止めて被害が大きくなったという。それが移設につながり、翌年の昭和33年には、石橋として初めて国の重要文化財に指定されたのだった。昭和32年の洪水の被害を調べると、とても大きかった。
復旧工事を経て、今では、とても良いまちなみが広がっている。
というわけで、今日の散策はここまで。前回の市町村一周の旅では、諫早市で小長井のバス停や眼鏡橋を訪れたけれど、ほかの地域のことを詳しく知らなかった。今日、飯盛から多良見まで、それぞれ暮らしが広がっていることを知った。この旅ができてありがたいとつくづく思うばかりだ。
本日のひとこと。
諫早市を巡っていて、福山雅治さんの〇〇、と聞く場所が何度かありました。
(終わり。次回へ続きます)
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今回の旅をはじめる前に、自費出版の写真集「どこで暮らしても」を製作しました。東京23区を1200kmほど歩いて巡り、撮影した一冊です。売り上げは旅の活動費として、活用させていただきます。
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