西海市の「雪浦ゲストハウス森田屋」を出発し、長崎市に入っていく。外海(そとめ)や琴海(きんかい)といった長崎市北部のまちから、長崎半島の先端に位置する野母崎まで訪れた。昨日巡った西海市もだけれど、今日訪れる長崎市のまちは、かつて西彼杵(にしそのぎ)郡に属していた。今その郡名を持つものは、時津町と長与町だけだ。
西彼杵郡、という言葉の響きが好きだから、ちょっとした寂しさもある。今日はその旧町の気配に、少しでも出会えるといいな。
それでは順に振り返っていこう。
今日までの旅メーター
訪れた政令指定都市の区の数 【81/175】
訪れた旧市町村の数【774/2,094】 総計【855/2,269】スーパーカブの総走行距離
21930km
さらに、ずっと行きたかったのが、遠藤周作文学館である。ただ恥ずかしいことに、代表作である『沈黙』も読めていない。実家の本棚に置いてきたので、早く回収したい。でも、まだ著書に触れていないのに、なぜか遠藤周作には惹かれていた。
そして、彼が若くしてキリスト教の洗礼を受け、宗教性に向き合い続けたことが、作品の根源にあったことを、今日初めて知った。
館内に入ると、グレゴリオ聖歌が流れていた。無伴奏であり、清らかな声だけが響いている。体が何かに包まれ、魂に何かが語られるようだった。
館内はほぼ撮影禁止なので、写真を撮っていない。だが、遠藤周作の生涯に触れる展示は、力強く刺激的な時間だった。たくさんメモを取った。遠藤周作という人物がもっと好きになった。
メモをした一部に、宗教性への言葉があった。
各宗教は別々かというと、私は、キリスト教が説いていることも、仏教が説いていることも、ヒンドゥー教が説いていることも、根底においては共通したものがあると思う。
(略)
つまり、それは富士山を東から見るか、西から見るか、北から見るかであって、登っていく道は別々だけれども、頂上においては同じだということです。
(略)
どのような宗教であれ、その根本にあるものは一緒なのであり、それは人間だれもが持ち合わせている無意識の中に存在する。それこそが私のいう“宗教性”で、あらゆる宗教の根本なのだと思うのです。
—遠藤周作『深い河』創作日記 宗教の根本にあるもの より
やすらぎの小径公園で眺める大村湾。ー旧琴海町(長崎市)
再び海沿いの国道204号線を南下し、地形がやや内側にしぼんだ畝刈町のところで、V字型に曲がるように方向転換し、旧琴海町へ向かった。
中心部にやってくると、海は近いけれど東に小さな丘陵地帯があって、大村湾は見えない。西海川沿いで散歩する夫婦や、遊んでいる子どもたちの姿を見た。
やがて、もう少し北へ進むと大村湾が見えたのだが、その大村湾近くのニュータウンに驚いた。高い密度で住宅が集まっている。内湾で海が安定しているので、海が近くても住宅地がつくれるのかなあ。
造船所と長崎港の玄関口。ー旧香焼町(長崎市)
旧香焼町はかつて長崎湾に浮かぶ島だったが、埋め立てられて今では陸続きになっている。と、あとから調べてわかったわけだが、訪れたときは島なのか陸なのかわからずに苦労した。雰囲気は島なのに、島という文字がどこにもなかったからだ。だから、埋め立てという答えで実にスッキリした。
やはり香焼では造船所が印象的だった。かつては三菱重工の造船所であり、現在は大島造船所に引き渡されたという。造船の変遷には詳しくないが、まちを歩いていると造船所がやはり軸になっているように感じられた。
リゾート地を感じつつ、伊王島灯台へ。ー旧伊王島町(長崎市)
山の東西に広がる暮らし。ー旧三和町(長崎市)
長崎半島の先端にあるまち。軍艦島資料館へ。ー旧野母崎町(長崎市)
次に軍艦島資料館を目指した。野母崎からは軍艦島がよく見えるのだ。そして、軍艦島資料館に着くと、同じ場所に恐竜博物館があった。家族連れでとても賑わっている。広場と遊具もあり、子どもがのびのびと楽しそうで、見ているだけでも幸せな気持ちになった。
さらに、同じエリアには水仙の里展望台があって、ちょうど今は水仙の時期なので、花が咲き誇る光景にうっとりしながら展望台へ上がった。いよいよ展望台からは、くっきりと軍艦島の姿が見えた。小さな島だが、今までに見たことのない形をしている。まだ、軍艦島には行ったことがない。
というわけで、今日の散策はここまで。野母崎から長崎市街地に戻ってからは、長崎駅に近い『ROUTE』さんに宿泊させてもらった。スタッフさんがとても温かくて、やさしい空間だ。
路面電車に乗り、長崎大学駅で降りて、フラワーメイトというお店に入った。知り合いの方が、かつてここでアルバイトをしていたのだと教えてくれたのだ。その方が働いていた頃に小学生だったという男の子が、今お店のマスターをしているのだと。マスターとはお話しできなかったけれど、きっとこの方かなという男性がいて、別の席の大学生にやさしく声をかけていて、温かな雰囲気を持っていた。
路面電車内で、交通系カードのチャージの仕方がわからずに汗をかいた。正面の人に、地元民ではないとバレたと思う。
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今回の旅をはじめる前に、自費出版の写真集「どこで暮らしても」を製作しました。東京23区を1200kmほど歩いて巡り、撮影した一冊です。売り上げは旅の活動費として、活用させていただきます。
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