日比谷図書文化館さんとご縁をいただいて、お伺いさせていただいた。そのときはまだ昨年の11月で、イチョウが見頃を迎える前だった。数ヶ月経ってしまい、職員さんには頭がまったく上がらない思いだ。担当してくださった樋口さんは、ぼくのことを「仁科さんの旅って、計画的でスゴイ」と仰ってくださったのに、赤面の至りである。同じくこの期間、23区駅一周をなかなかできなかったけれど、年を跨いで落ち着いたので、当日のことを、書き残したいと思う。
(*館内は通常、全館撮影禁止です。今回は取材許可を得て、撮影しています。)
日比谷図書文化館さんは、1908年からの歴史を持つ“知の拠点”。2011年には前身の都立日比谷図書館を受け継いで、図書館の機能のみならず、文化を伝える千代田区の複合施設として改修され、現在に至っている。
日比谷図書文化館さんとのご縁は、先にもご紹介した樋口さんという方だ。樋口さんは本に対してとても熱いハートを持たれている。今回も日比谷図書文化館さんを巡りながら、日比谷の歴史をたくさん教えていただいた。
みなさんは日比谷に対して、どのようなイメージをお持ちだろうか。都会、お洒落‥‥十人十色だろうけれど、歴史を辿っていくと、海からはじまり、やがて埋め立てられ、陸軍練兵場になり、洋風の公園になり‥‥、と、ものすごく面白いのだ。
——樋口さんに、日比谷の歴史をひととおり教えていただいた——
「日比谷ってもともと海だったんですよ。日本橋辺りから、京橋、銀座辺りは江戸前島という半島で、半島と江戸城との間が海。その海は日比谷入江と呼ばれていました」
古地図を見ると、「江戸前島」という房総半島にそっくりな半島があって、その間の海に、現在の日比谷が位置していた。つまり、かつての日比谷は入江で、江戸時代に入って以降、埋め立てが進んだのだ。
「私なんか素人だから、埋め立てなくてもいいじゃない、と思ったりしましたが、江戸時代にも守りと攻めの名残がありまして。日比谷を埋め立てることで、江戸城を守れる。そこに大名屋敷ができて、お城を中心としたまちづくりが行われていきました。ただ、明治になると、変わっていきますよ」
「明治維新のあと、いまの日比谷公園辺りには、陸軍の練兵場が出来ました。やがて、西洋に負けない都市づくりをしないと、という気風が盛んになっていきます。日本もこんなにすごいんだぞ、って。それで新橋から横浜まで鉄道が通ったのが明治5年、銀座をレンガ街にしたのが明治10年ですね」
「明治16年には、いまの帝国ホテル(日比谷公園のそばに位置している)の横に、鹿鳴館(ろくめいかん)が完成しました。国賓や外交官を迎える西洋館です。この時点で、江戸時代のときのまちづくりとは、もう全然違う。まちの形態は都市へ向かっています。国会議事堂も必要だし、裁判所も必要だし、学校も必要だし、と今までにない箱ものが必要になった。そこで、『帝都にふさわしい公園も必要だ』という流れが生まれたわけです」
「でもね、みんな西洋の公園を見たことがないから、公園がなんぞや、って分からないんです。想像したら、最初の案はぜんぶ日本庭園っぽくなっちゃう。あと公園に限らず、江戸時代の名残、カーブが多い道をまっすぐにしたり、幅を広げたり、市電をつくったり、日比谷もガラッと生まれ変わりました。そして計画から14年もかかって、ようやく日比谷公園が出来るんです。国家プロジェクトでした。都市計画に基づいて整備された、近代的洋風公園の第一号です」
「日比谷公園が完成したのは明治36年、そして5年後の明治41年に、東京市立日比谷図書館が開館します。当館の建物は東京百建築にも数えられましたが、昭和20年、空襲で焼失してしまいます‥ ‥」
「戦後、日比谷公園はGHQに占領された時期もありますが、昭和32年には、三角形の図書館として再建されました。土地が三角形だったことをそのまま用いたそうですが、モダニズム建築なんです」
「そして、2011年に現在の千代田区立日比谷図書文化館として生まれ変わり、今年(2021年)は10周年で。だから、いろいろな企画展をやっています。図録や、江戸から東京への変遷を巡る展示。そういうものを、是非発信してもらえたら嬉しいです」
そうなんです。去年、日比谷図書文化館さんは10周年でした。それなのに、ぼくが年を跨いだせいで、11年目に突入しました。本当に、申し訳ありません。みなさん、日比谷図書文化館さんは今年で、11年目です。誰でも本を借りられますし、展示はもちろん、様々な催しが開かれています。ぜひ、情勢を見つつ、日比谷図書文化館さんに行きましょう!
樋口さんには「日比谷の歴史を伺えたら」とお伝えをして、書籍を洗いざらいに調べてくださいました。本当にありがとうございました。館内も案内していただき面白かったですし、樋口さんのおかげで、日比谷の歴史を知ることができました。素敵なご縁をいただき、ありがたい気持ちでいっぱいです。とにかく、記事の作成が遅くなってしまったこと、本当に申し訳ありませんでした。まもなく、日比谷駅も日比谷公園も、歩かさせていただきます。
(取材協力|日比谷図書文化館さま)