ふるさとの手帖

市町村一周の旅

県境を越えて、中和の方々と再会できたこと。【旧市町村一周の旅(鳥取県・岡山県|7月10日―460日目)】

県境を越えて、中和の方々と再会できたこと。【旧市町村一周の旅(鳥取県・岡山県|7月10日―460日目)】

今日までの旅メーター

訪れた政令指定都市の区の数 【87/171】

87/171
50.88%
訪れた旧市町村の数【1199/2,094】
1199/2094
57.26%
総計【1286/2,264】
1286/2264
56.80%

スーパーカブの総走行距離
31330km

旧関金町→(続く)
旧八束村→旧川上村→旧中和村→旧湯原町、の計5つ。

今日の旅先のこと
朝7時20分に倉吉市を出発だ。昨日の大雨で、内側のクッションがこれっぽっちも乾いていないヘルメットをかぶる。ぺたぺた、って肌が冷たい。曇り空だったけれど、ここ数日の雨を思えば、もはや晴れにすら感じられた。今朝は涼しいと感じながら、関金町へ。
関金町せきがねちょう(倉吉市)(1/5)
倉吉市を走っていると、地域が変わるごとに地名の看板が現れて、小さな地名が意識されていると感じられる。関金町に入ると「関金温泉」の看板も目に入った。鳥取県は温泉が多い。そういえば、三朝温泉も近いもんなあ、なんて思いながら、昔の町並みを散策した。家の前の花が綺麗に手入れされていて、ある家の倉庫には卓球台もあった。ささやかな暮らしの場だ。
旧国鉄倉吉線の、泰久寺駅跡という場所も目指してみる。駐車場があったので、カブを停めてすぐに辿り着けるかなと思っていたけれど、駐車場から約1km歩いた先にあるとのこと。
粛々と歩くうちに汗をかく。ずっと昔のレール沿いに進んでいき、大きな木の森が現れて、駅跡は最後に竹林に囲まれた。木々が増えると、一気に雰囲気が変わるので面白い。
八束村やつかそん(真庭市)(2/5)
さあ、ここから岡山県へ入っていく。ここ数日、どのようなルートを選ぶか迷っていた。鳥取県をそのまま東へ進むか、岡山県を経由するかの2パターンで。

岡山県に入ると県北の積雪地帯を進むことはできるけれど、巡るまちの数が一気に増えるので、強い気持ちが必要になる。鳥取県をすぐに東進すれば、見た目の流れも違和感がないし少し楽だけれど、岡山県北をあとから巡ることになる。

やっぱり、しんどい道を選ぶべきだなあと思うわけです。

とても長い犬挟いぬばさり峠のトンネルを抜けて、真庭市へ入った。八束村は蒜山の麓に広がるまち。県南で育ったぼくも、蒜山という名前を小さな頃からたくさん聞いて育った。でも今日は蒜山が雲に隠れているので、ちょっぴり残念。
市街地を巡ったあと、塩釜の冷泉という場所を目指した。市街地の家は薪もたくさん置かれていて、積雪地帯であることがよく分かる。畑は黒土で、特に大根の栽培には適しているそうだ。

塩釜の冷泉は、ぽつりと湧水池があるのかなと思っていたら、キャンプ場の敷地内にあり、レストランや直売所もあった。直売所には立派な大根も売られているし、鳥取のスイカもあった。

鳥のさえずりを聴きながら、小さく流れ出る冷泉に辿り着く。ひっそりと美しい水の流れだ。別のところで水を汲むこともできて、手にとっていただくとほんとうにおいしかった。

川上村かわかみそん(真庭市)(3/5)
八束村から西へ進み、川上村へ。川上出張所へ向かっていく道中は、さまざまな観光施設が並んでいた。たとえばワイナリーやレストラン。そして、巨大なジョイフルパーク。

遠目から観覧車やアトラクションの遊具が見えて、なんだろうあの建物は、と近づいていった先がジョイフルパークだった。手前の建物は巨大な城のよう。知らなかったなあ。小さな頃に、来たことがあるのかな? いや、たぶんない気がする。チボリ公園ばかり連れて行ってもらっていたし。
市街地へ到着した頃、合羽が必要なぐらい、本降りの雨が降ってきた。ちょうどコンビニがあったので雨宿り。山が近いし、雨も降りやすい地域なんじゃないかなあと思ったりもした。
中和村ちゅうかそん(真庭市)(4/5)
中和村は、2022年春に取材で初めて訪れた村だ。ひょんなご縁から機会をもらい、中和で暮らす農家、猟師、豆腐屋…といったなりわいを持つ方々に出会う。そこで伺った話は、地に足がついていて、自然や命と向き合い、生きていく力があり、すごく感動した。

今回、取材でお世話になったすべての方にご挨拶はできなかったけれど、何人かの方々と連絡を取ることができ、急な訪問にも関わらずお会いさせていただいた。最初にお会いしたのは高橋さんご夫婦。猟師であり、農家でもある。2年前の取材ではアライグマを狩る現場にも立ち会った。

久しぶりにお会いできたあと、愛犬のモンティも一緒に、山乗渓谷という渓谷へ連れて行ってくださった。「ほんとうに良い渓谷なんだ」と教えてもらった言葉通り、渓谷の川の流れ、森の囁きは、実に見事だった。
口コミで評判になることや、周囲にたくさん知られていることが、ほんとうの良さとは限らない。山乗渓谷の良さは、行けばわかる。でも、ぼくも高橋さんに教えてもらわなければ、辿り着けなかったような気がしている。だから、自戒を込めて良さというものは自分で感じ、自分で判断できる人間でなければならない。

高橋さんには別れ際におにぎりをいただいた。夕食にいただいたけれど、ご飯もおにぎりの具も信じられないぐらい美味しくて、「どうしてこんなに美味しいんだ……」とすごく思った。ご飯も冷たいはずなのに、あたたかい味だった。
次にお会いしたのは、高谷さんご夫婦。農家であり、蒜山耕藝の食卓「くど」という場も持たれている。いっしょにお手伝いをされているMさんともご挨拶をし、なんとありがたいことに、昼食をご一緒させていただいた。 高谷さんたちが育てる作物は、農薬や肥料を使わず土や自然、季節に従ったものだ。農薬や肥料を使わないという言葉を耳にするとき、先に理屈を口にしようとしてしまうならば、とってもカッコ悪いということを、これも自戒を込めて先に述べておく。

キャッチしていると思いやすい言葉よりも大切なことがある。ぼくは高谷夫妻が見ている眼差し、生き方、在り方、そういったものが好きだ。人柄という言葉でまとめられないようなあたたかさとつよさ。それはやさしさでもある。

とっても美味しいカレーをいただき、ささやかな話をしながら過ごした時間が、心を耕してくれた。
さらに、最後に近藤さんご夫婦にもご挨拶をさせていただいた。禾(こくもの)という言葉とともに、奥さんは平飼いの自然養鶏を、ご主人は自然栽培の穀物を育てていらっしゃる。

農家の方々にゆっくり話を聞ける場は少ないので、あれこれと生真面目な質問をしてしまったけれど、近藤さんたちは丁寧に一緒に考えてくださった。

2年前に取材で伺ったとき、ぼくは東京の人っぽい印象だったと言われたことも意外だった。いや、確かに東京という言葉を借りて過ごしていたことも、間違いなかった。「東京から来ました」を離れて1年半ほど経つけれど、「岡山から来ました」や「倉敷から来ました」は、すごく言いやすい。
湯原町ゆばらちょう(真庭市)(5/5)
みなさんとお別れをして、湯原温泉へ向かった。雨も降る中、温泉街を歩いてみる。最初にメイン通りかもしれないなあと思うところを歩くと、まだ辿り着いていない感じがあり、あらためて看板の地図を確認し、元湯と砂湯を発見。そこまで歩いてみた。 砂湯は川沿いにある、無料で入れる混浴の露天風呂だった。遠目からでも湯気がもくもくと広がっていて、男性客がひとり湯船に浸かっていた。ぼくももちろん入りたいけれど、今日は時間がないのでまたの機会に。

ほかにも湯原町には、足温泉や真賀温泉がある。後日、真賀温泉には入ることができた。料金も250円と安く、岩の湯船が深くて新鮮だった。

というわけで、今日の散策はここまで。中和で暮らす方々にお会いでき、たくさんのエネルギーをわけてもらった1日でした。
本日のひとこと
19時を過ぎて、ヒグラシの鳴き声が聞こえて、「ヒグラシだ!!」と。

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今回の旅をはじめる前に、自費出版の写真集「どこで暮らしても」を製作しました。東京23区を1200kmほど歩いて巡り、撮影した一冊です。売り上げは旅の活動費として、活用させていただきます。
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(終わり。次回へ続きます)

 

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